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コーチに傷つけられた、あなたへ(コーチングと正義1/2)

あなたが、コーチングを受けて、傷ついたとしたら。
コーチに、受け入れてもらっていない、と感じたとしたら。
あなたが、コーチに裁かれた、と感じたとしたら。

たとえば、コーチに「あなたは間違っている」といわれたとしたら。

そして、傷ついて動けなくなったり、
そのコーチや、他者を信じることが怖くなったら。

それは、あなたのせいじゃない。
あなたは、悪くない。

コーチングは、コーチの正しさを証明するためのものではないから。

クライアントさんであるあなたは、
コーチが、自分の正しさを確認するための道具ではないから。

僕も、クライアントさんを傷つけてしまったことはあるし、
いまも、傷つけしまっていると思う。

僕なりに、全力で役に立ちたいけれど、
失敗することはある。

それでも、それでもやっぱり、
それは、クライアントである、
あなたのせいじゃない。

*     *     *

先日、こんな話を伺いました。

聞かせてくれたのは、
グローバルな交流会で出会った女性。

ちょっと小柄で、元気な勉強家。
一緒に居て、こちらも笑顔になっちゃう人でした。

ランチを食べ終わった後、その人が、

「実は私、コーチングが、信じられなくなってるんです。」

と話し始めたんです。
もちろん、僕がコーチングをしていることは、ご存知です。

不思議だったので、
もう少し、どうしたのか教えてもらいました。

(以下、本人の許可をいただいて掲載します)

「サポートを受けていたコーチに、
過去の失敗を、打ち明けたんです。

10年以上、ずっと後悔していて、
誰にも話せなかったことでした。

すごく迷ったんですが、
いつまでも引きずっているわけにも行かないし、
コーチを信頼しようと思って、
打ち明けたんです。

そしたら、コーチは、『それはダメでしょ!』って、
言ってきたんです。

自分でも、今でも悔やんでいることを、
勇気を出して打ち明けたのに、
頭ごなしに怒られて、
すごくショックでした。

それから、コーチっていう人たちに、
信頼感をもてなくなっているんです。

コーチングって、
いったい何のためにあるんだろうって、
思っちゃうんです。

・・・私がおかしいのかなぁ。」

その時点では、実際に彼女が過去にしたことは、聴きませんでしたし、
どんな意味で、そのコーチが「それはダメでしょ!」
って言ったかも、聴きませんでした。

(僕の興味・関心を満たすよりも、
その女性が、自分の思いをつむぎだすことを、
大切にしたかったので)

なので、詳しくはわからないけれど、

ずいぶん昔に、自分がしてしまったことで、
ずっと悔いていて、
誰にも話せないで、
胸の奥で、ずっと痛み続けている記憶だったそうです。

おそらくは、そんなに「凶悪」なことでは、
なかっただろうと思います。

おそらく、いまの彼女から考えてみれば、
未熟だったなと思えることだったり、
不注意に誰かを傷つけてしまったり、迷惑をかけたり・・・

そうした、人間ならだれでもしてしまうような、
「失敗」だったんだろうと思います。

もしかしたら、
昔の事を悔やむと同時に、
いまもその記憶が引っかかっている自分にも、
もどかしさを感じているかもしれません。

だけれども、

もし仮に、彼女が、本当にひどいことをしたとか、
もし仮に、彼女が、誰かを深く傷つけたとしても、

もし仮に、100人中、99人が、
「ああ、それは良くないことだった」と、
思うようなことだったとしても、

そして、その結果、
彼女がいまどんな状態になっていたとしても、

コーチの仕事は
「それはダメでしょ!」ということじゃありません。

そもそも、「ダメ」じゃないと思いますが、

百歩譲って、「ダメ」だったとしたって、
そんなことは、彼女が、だれよりも一番知っている。

本当はそんな結果を望んでいなかったからこそ、
人を大切に想っているからこそ、
もっと賢くなりたいと願うからこそ、
「失敗」は、痛み続ける。

すでに彼女は自分を責めていて、
もう、十分に苦しんでいる。

そして本人は、乗り越えたいと思っているからこそ、
コーチに話している。

彼女がコーチングの場で語るということそのものの中に
彼女の、後悔も、反省も、誠意も、意欲も、
すべてが詰まっている。

時に僕たちは、必要以上に自分に厳しいから、
彼女も、もう十分以上に、
自分を責め続けてきたかもしれない。

ちょっとした失敗には見合わないほど、
強く、自分を責め続けてきたかもしれない。

そして彼女は、
その失敗の先に、
その痛みの先に、行こうとした。
だからこそコーチに相談した。

自分を責める以外の形で、
自分自身に向き合い、

そんな失敗をした自分だからこそ、
これからどう生きていきたいかを、
一緒に考えてくれると信じて。

コーチが、そんな自分も、支え、受けいれ、応援してくれると信じて。

それなのにコーチに、
「それはダメでしょ!」といわれてしまった。

いまさら取り返しのつかない過去について、
彼女自身も、後悔している過去について
コーチに、裁かれてしまった。

味方でいてくれると信じた、そのコーチに。

そりゃあ、コーチやコーチングが信じられなくなって、
当たり前です。
裏切られたわけですから。

*     *     *

コーチに傷つけられたあなたに、
僕がもし傷つけたのなら、本当に、ごめんなさい。

もし別のコーチに傷つけられたとしたら・・・
僕が代わりに謝れるものでもないけれど、
やっぱり、おなじ業界の人間として、
謝罪したいなぁと思います。

あなたがコーチに傷つけられたのは、
あなたのせいではありません。
それは、僕たちコーチのせいです。

僕たちコーチの仕事は、
決して、クライアントさんを裁くことではないと思います。

僕たちの、個人的な正義感を主張することでもありません。

ましてや、怒りをぶつけて、あなたを傷つけることではありません。

僕たちコーチは、あなたの味方でいるために、そこにいます。
僕たちは、あなたと一緒に進んでいくために、そこにいます。
僕たちは、あなたの勇気や可能性に、光を当て続けるため、にそこにいます。

(法律上、犯罪行為の支援や黙認は、許されませんが)

これは、理論や技術、能力などからなる手法であると同時に
クライアントである、あなたへの約束です。

タクシーが、あなたを怪我させずに、
あなたが告げた場所に連れて行くのと同じように、

レストランが、あなたを食中毒にせずに、
あなた注文したメニューを出すのと同じように、

僕たちの仕事は、
あなたの味方でいることです。
傷つけるのではなく、支えるために、ここにいます。

言葉で確認するまでもないほどの、
当たり前の、約束です。

「もう、これができないなら、コーチと名乗れない」
というレベルのことです。

もしも僕たちが、
クライアントであるあなたの思いに寄り添えなかったり、
あなたを裁いてしまったり、
あなたの思いを踏みにじってしまったなら、

いや、そのとき、僕にはそんな意図がなかったとしても、
あなたに、(たとえ誤解でも)もしそう感じさせてしまったとしたら、
それは、僕の責任です。

だから、あなたは、
そのことで自分を責める必要なんて、ない。

コーチとして、あなたにした、
「あなたと共に進みます。」という約束を
守ることができなかったから。

どんな事情があるにせよ、
どんな意図があるにせよ、
どんなに悪意のない一言だったとしても、

あなたが傷ついた時点で、
あなたの勇気をくじいた時点で、
それは、僕たちコーチの側の、失敗です。

*      *      *

もちろん、コーチにも、
個人的な正義や倫理観、
「こう生きたい」という願いはあります

だからこそ、おそらくコーチングを仕事にしています。

僕自身にも理想や、大切にしていること、
僕にとって正しいと思えることはいっぱいあります。
受け入れがたい事だってあります。

だけど、それは、コーチ自身のこと。
正義や、常識の形をとって、上の立場から、
他者に押し付けるものではありません。

クライアントさんと、コーチが、
別の考え方や、行動をしたとして、それは、
責めるべきものではありません。

むしろ、歓迎すべき、愛すべき、賞賛すべき、違いです。
その違いがあるからこそ、この世界に創造性が生まれます。

もしも、クライアントであるあなたが、
コーチの望みや予想と違う決断や行動をしたとしたら、
それは、おそらく、コーチングがうまくいっている証拠です。

クライアントさんが、
コーチの想定を超えた答えを出すことを、
喜び、歓迎できるかが、
コーチとしての最低限の土台のひとつです。

あなたは、あなたとして正しい。
そして僕たちコーチは、あなたを支援するためにいます。

僕が、あなたの味方でいられないなら、
僕は、あなたのコーチではない。

もしも、僕が、「このクライアントが思い通りにならない」
というストレスや痛みを感じているなら、

そのストレスや痛みは、
僕自身が引き受け、向き合うべきもので、
あなたに押し付けるべきものではありません。

あるいは、セッションという仕事とは違う枠組みで、
あなたに相談を持ちかけ
対話をもちかけるべきことだと思っています。

それでも折り合いがつかないなら、
僕は、あなに害を及ぼすことはできても、
コーチとして役に立てることはできない。

「私はあなたに対しては、適切なコーチングができません」
と、正直に白状すべきものだと思っています。

約束を守ってこその、サービス提供ですから。

だから、それ以上、あなた自身を責めないでください。
コーチが、あなたを、道具として使うことを、許さないでください。

あなたは、あなたとして正しく、
それは時には人と違い、
だからこそ素晴らしいのだから。

コーチングは、多様性と、敬意と、信頼に基づいたものだから。

僕も、

今自分は、この人の味方でいられているか。
今自分は、自分の正しさを証明するためにコーチングをしていないか。
今時分は、クライアントさんを、自分の正しさを確認する道具にしていないか。

これを自分自身に、
問いかけ続けたいと思っています。

コーチに傷つけられたあなたへ。
コーチに傷つけられたなら、
それは、あなたのせいじゃない。

だからそれ以上、あなたを責めないで。

あなたが、
あなた自身を信じられること、
必要なサポートを適切に受けられること、

あなたが、あなたとして生き、
一歩一歩進んでいけることを、
祈ります。

そして・・・コーチング大好き人間としてもうひとつ・・・
あなたがどこかで、あなたにぴったりな、
素敵なコーチングに出会うことも、祈っています。

あなたを、応援しています。

ひろ。

彼女の話には、
実は後日談があります。

その話が教えてくれることは、
今日の話は、とてもわかりやすい話だったんだけど、

実は、僕たちは、
とても微妙なレベルで、
自分の正義の押し付けを知っちゃっているかも知れないということ。

そしてそれは、
この例と同じぐらい危ないし、
もしかしたら、もっと危ないかもしれない、
ということ。

それともうひとつ、
その方から、ひとつ質問もらいました。

そのことについて、
次の記事で、もう少し詳しく考えてみます。

コーチに必須の“質問力&応用力”を鍛えよう!

コーチに必要なのは、「クライアントさんを思い通りに操作する力」ではなく「クライアントさんに合わせて、自由自在に対応する力」「瞬間瞬間にダンスする」とも言います。

・まずは楽しく手軽に、役立つコーチングを身につけたい
・どんな相談でも、自信をもって対応できるようになりたい!
・知らない人とのセッションが怖くて、なかなか内輪での練習から飛び出せない・・・
・改めて「コーチングって何だっけ?」を見つめ直したい


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人生やキャリアなど、この世界には、「正解のないこと」があふれています。そしてコーチングは、答えを教え込むのではなく、ともに正解のない問いに向き合い、クライアントさんととも探求する仕事。

そのためには、コーチが「答え」を知らない話題や、予想外の展開に直面しても、焦らず臨機応変に、クライントさんの探求に寄り添う力が必要です。

だけど書籍や、教室での練習では、「想定外」に対処する力を養うことができません。コンテンツとしてまとめる時点で、どうしてもマニュアル的になってしまうし、予定調和が働いてしまうからです。これまでコーチング教育の世界には、「教室での学び」と「現場での現実」を橋渡しする手法が存在していませんでした。

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