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はたちの恋

ちょっと今日は、昔の恋の話をしよう。

雨が降って、ホットワインなんかのみたいような夜に、ピッタリの、
僕が学生だった頃の、恋の話を。
(・・・とここまでかいて、くさぁい出だしに、自分でニヤニヤ。)

クサイついでに、BGMでもどうぞ (宇多田ヒカル「First Love」)
https://www.youtube.com/watch?v=o1sUaVJUeB0

 

僕がちょうど、10代から20代になる頃に、
僕は初めて、恋に落ちた。

 

上目遣いにじっと見つめる、かわいらしい瞳をした人だった。
まぶしいくらい白い、美しい肌を持つ人だった。

 

かわいらしい唇からは、それはそれは美しい、
鈴を転がすような声が聞こえた。

 

一生懸命に生き、本気で悩み、
夢中で人生を楽しみ・・・・

 

そして少し不器用に、彼女だけが持つ、奥深い優しさを見せる人だった。

 

初めて会った時、かわいい人だと思い、

 

青空の下で語り合い、
夜空の下で自転車をこいでいるうちに、

いつの間にか、彼女が僕の心に住み着いていた。

 

 

一緒に映画館に行き、
博物館へと誘い合ううちに、

僕にとって、彼女は憧憬の対象となっていた。

 

その時僕はいろんな感情の波を経験していて、
なかなか自分の心を信じられなかったんだけど、
あこがれてた先輩と飲み明かした時、

 

「人生はいちどきだぜ、四の五の言うな」と、言われてしまった。

 

そして、決意した。

いまある、この感情に身をゆだねると。
彼女が欲しいという思いに、自分を賭けると。

 

そこには、依存があるかもしれない。
ドラマがあるかもしれない。
思い込みかもしれないし、真実の愛かも知れないし、
妄想かもしれないし、相手を傷つけるかもしれないし、

 

周囲に迷惑をかけるかもしれないし、映画のような素敵な恋ができるかもしれないし、
とても幸せな一生の幕開けかもしれないし、結婚できるかもしれないし、
離婚してしまうかもしれないし、肉欲のごまかしかもしれない。

 

・・・・・だけど、これらの全てのコメントと予想は、

 

これから起りうる未来と、解釈のレパートリーの、
無限の可能性の中から、僕の限られた思考力で見つけ出した、
ほんの数十種類の組み合わせなんだ。

 

妄想と言うならば、この頭で考えた、解釈と未来予測こそ、妄想だ。

 

そして、今この瞬間、ここにある、この気持ち、この想い、この痛み、渇望。
これこそが、リアルなものなんだ。

 

それならば僕は、この瞬間の、この気持ちに、全てを委ねよう。

 

彼女に傍にいて欲しいこと、
彼女がいると幸せなこと、
彼女がいないと、寂しいこと。
彼女を抱きしめたくて、仕方がないこと。

 

四の五の言わず、この気持ちに、正直になろう。

 

そう決意した。

 

そして僕達は、付き合い始めた。

 

近くの町で遊ぶ、
一緒に美術館に行く、
一緒にレンタルビデオを見る。
何の事はない、学生生活の1ページ
ありふれた男女の、ちょっとしたストーリー。

 

だけど、その時の僕にとっては、

 

まさに自分の全存在をかけた、燃えるような恋だった。

 

これほどまでに、人の幸せを願えるということ、
自分自身よりも、大切に思える人がいるということ、
こんなにも、1人の存在が、自分を揺り動かすということ、
1人の女性がいてくれるということで、こんなにも自分が勇気付けられるということ。

 

勉強よりも、バイトよりも、何よりも大切な人がいるということ。
彼女の涙が、彼女の笑顔が、他の何よりも優先するということ。

 

僕は、驚いた。自分の変化に、驚嘆した。
そして自分自身の恋に、深く酔った。

 

その頃僕は繰り返していた
「これが愛なんだなあってわかった。」
「愛することがどういうことか、初めてわかった」 と。

 

恥も外聞もない、浮かれた台詞を、
友人達は笑顔で聞き流してくれた。

 

それぐらい、彼女との時間は、僕にとって特別だった。

 

どんなに自分がぐちゃぐちゃと悩んでいても、
彼女が視界に入ったとたんに、一気に元気になる。
彼女を喜ばせることに、一瞬一瞬を費やす。

 

彼女が大切な話を始めると、
まるですべてが白黒で、スローモーションになるかのように、
あらゆる思考が止まり、心が静まった。

 

クリアな空間が、静かに広がり、
全身全霊で、彼女の言葉を聴いていた。
その瞬間、世界のすべてが消え去り、ただ、彼女だけがあった。

 

その瞬間、自分のことすら、ほとんど忘れていた。

 

僕にとっては、生まれてはじめての、至高の経験だった。

 

大学生生活の半分以上を費やした、素晴らしい2年半だった。

 

・・・・そして、あれから5年以上。

 

 

今の僕がいる。

 

その間、かなりの量の本を読み、
セラピーに没頭し、
コーチングを学び、いろんな人に会った。

 

おそらく僕は無意識に、あの体験を、もう一度繰り返したいと願い続けていた。

 

あの、自分自身すら溶け去ってしまうような、
静かに広がった空間。

 

すべてが消え去り、ただ相手の瞳だけが光を放ち、
相手の声だけが宇宙を流れる瞬間。
自らを忘れ、ただただ没入する、静かな歓び。

 

それが「傾聴」の基礎であり、本質であると知ったのは、
随分後になってからだった。

 

自分の中の思考を飛び出して、
ひたすら相手の世界に入り込んでいくということ。

 

相手に寄り添って、相手の語る世界を一緒に見るということ。

 

もしかしたら口にしてもバチがあたるような
思い上がった考えなんだけど。

今僕はコーチングをする時、
愛を実践しているんだと思う。

 

おこがましいことかもしれないけど、
僕は愛を形にする技を学んできたんだと思う。

 

彼女とは2年半の後にさよならをして、
今はもう、どこにいるのかもわからないんだけど、

8年前の出会いが、僕を大きく変えてくれた。
彼女が、僕の愛する力を、引き出してくれた。

 

多分これからも、愛についての学びは続くんだと思う。

 

今まで学んだことを深めていくこともあるだろうし、
全く別の愛があるのかもしれない。

 

だけど、ここまでこれた原動力の一つは、
僕に今の仕事を教えてくれた教科書のひとつは、
8年前の出会いが教えてくれた、愛だった。

 

You are always gonna be my one

いつか誰かとまた恋に落ちても

I`ll remember to love

You tough me how

(宇多田ヒカル First Love)

 

一生伝えることはできないであろう、
だけど確固たる、あふれるほどの感謝をこめて。

 

ありがとう。

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