現代ビジネスよりシェア。エリート、家制度、男性性、抑圧、生きづらさ、そこから逃れるすべなど。
「なぜ日本の男は苦しいのか? 女性装の東大教授が明かす、この国の「病理の正体」
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/47501
興味深く、わかりやすい。多くの部分に同意。
続編も含め3つの記事。それぞれお勧め。
***以下抜粋***
「(本人の歩んだ道は)一見、華々しいエリートコースだ。
しかし、心の重圧は取れず、たびたびわき起こる自殺衝動や、持病の頭痛に悩み続けたという」
「“エリートにありがちだけど、高い目標を掲げて全力で取り組み、
それが達成できたら“やれやれ失敗せずに済んだ”とホッとすることの繰り返し。
達成の瞬間にホッとしても、喜びは感じられない。
かといって、挑戦することをやめると気が狂いそうになるので、やめられない”」
「”自分でないもの”に無理矢理なろうとしても、なれないのでストレスが溜まる。
ストレスが溜まると他人に八つ当たりする。
また、自分らしく生きている人が許せなくなって、
非難したり、自分と同じ苦しみを味わうように強要する。
個人レベルでは差別や犯罪、子どもを厳しくしつけたり、虐待したり。」
「狭いレールの上を走らされていて、
みんな、そこから抜けたら両側は断崖絶壁だと思っている。
でも、本当はね、人と立場を越えてつながりあっていれば、
どこだって生きられるんだよね。逃げ道はどこにでもあるんだよ。
ただ、人々がそれに気づかないようにしているだけ。
システムからはみ出す自分を認めること。それが息苦しさから抜け出す第一歩だよ」
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「“日本の”正しい母親像”は、戦中に作られたもの。
『子どもを立派な兵士として育て、戦死したらニッコリする』って言うね。
戦後はその精神が、経済活動に向けられて、”産業戦士”に変化したに過ぎない。
70年経ってもずっとその呪縛が日本人を縛っている。
今でも大半の母親は、知らないうちに”靖国の母”を目指している。
外側は民主主義だけど、内面はいまだに“靖国精神”。
その二重構造が子供を苦しめる”」
「“母親だけじゃないよ。
日本は戦時中の軍国主義のマインドのままで、
表面だけ民主主義に変わっちゃったからね、
精神は復員できていない。女は銃後、男は戦場。”」
「『貴様と俺とは同期の桜』っていう日本軍のモードのままなのよ」
「それに抵抗できなかったエリートの子どもなんかは、
官僚になって親に復讐する代わりに別のもの、
自然環境とか、自国の国土とか、弱者の生活とかを破壊する。
恨みの転換だよね。
社会全体に、自分でないもののフリが強要されると、社会は病んでゆくんだよ”」
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「立場主義社会っていうのはね、どこまでも、人と人とが話すことができない社会なんだよ」
「“中国はメンツ主義。
メンツがすべて。メンツを守るためには死すらも厭わない。
アメリカは多分『幸福で前向きなフリ』を続ける社会。
そのフリを続けるために薬物に依存して、それでも続けられなくなると銃器が出てくる。
英国やフランスもまた、それぞれに形態は違うけれど、
同じような抑圧のシステムを抱えている。
一見、民主主義のふりして、内部はガチガチのエリート主義で非民主的。
システムがものすごく上手くできているから文句のつけようがないけど、
エリートは精神的に追い詰められていて、階級差別が人々の魂を殺している。
だから、男たちはそのストレスをスポーツ観戦で発散して、フーリガンになる”」
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「日本の“家”制度なんて、とっくの昔に崩壊しているんだよ。
明治維新で構築した徴兵制がその最大の原因。
家単位の動員を否定して、個人単位にしてしまったから。
さらに、高度経済成長で家制度は息の根を止められた。
それなのに、実際はとっくに機能しなくなってるシステムを、
みんなで理想化し、守ろうと躍起になっているでしょ。
できないことをやろうとするから混乱する。
ここから生じる関係性のひずみが、虐待や引きこもり、
果ては家族同士で殺し合うような事態にまで帰結する」
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「たとえばマツコデラックスさんは、
人間の社会のピラミッドから外れたところにいて、
最初から差別される位置に居る存在だからバッシングされない、
と自分の本の中で語っているのね。
私はそれを『無縁』という概念で理解しています」
「ガチガチにつくった表のシステムで処理できないことを、
ウラでやらせるわけ。
だから、日本の社会は、本当は『無縁モノ』にとっては生きやすい社会なんだよね」
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「狭いレールの上を走らされていて、みんな、
そこから抜けたら両側は断崖絶壁だと思っている。
でも、本当はね、人と立場を越えてつながりあっていれば、どこだって生きられるんだよね。
逃げ道はどこにでもあるんだよ。
ただ、人々がそれに気づかないようにしているだけ。
システムからはみ出す自分を認めること。
それが息苦しさから抜け出す第一歩だよ」
*****追記***********
ちょっとこの記事の内容からは少しずれるけれど・・・
男性性に硬直した社会がどれだけ破壊的になりやすいかは、
たとえば、米軍内部での、女性兵士へのレイプや、
性的嫌がらせの件数が非常に高いことがあげられると思う。
ちなみに、、その被害は多くの場合、組織的にももみ消されている。
日本語でいいソースが見つからなかったんだけど、たとえばこれとか。
http://editor.fem.jp/blog/?p=285
この記事によると、
「女性兵士の33.5%が米軍内でレイプされ
63.8%が性的いやがらせを受けた
被害申告が出ているのは17%にすぎない
その上、軍内性暴力の申請の32%しか認められていない
ホームレスの女性退役軍人のうち39%が性暴力被害者」
英語では、Invisible Warというドキュメンタリー映画が、
このあたりについてしっかりと向き合ってる。
https://www.youtube.com/watch?v=1zpj9XoVFoI
ここで扱われているのは、軍内部での事件であって、
軍外部の人間に対しての振舞いはここには含まれていない。
(そしてそっちの、
たとえばアメリカ本土や沖縄や中東での基地の周囲で行われている性犯罪も、
大量にあるようだ)
日本の自衛隊内でも、
隊の内外での、性犯罪があるようだ。
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik07/2007-05-29/2007052901_02_0.html
「『性的関係の強要』を受けたことがあると答えた女性が18・7%、
『(性的)暴行(未遂を含む)』も7・4%にのぼる。女性自衛官一万人にあてはめると、
千八百人と七百四十人にもなり、重大な実態」と、上官によるセクハラの常態化を指摘しました。
(中略)加害者は停職一日、上司は注意処分で済まされた事例などをあげ、
他省庁と比べてきわめて甘い処分であるとのこと」
おそらく氷山の一角なんだろうな。
許されない犯罪であるとともに、
そういう、他者の人間性を無視してしまう、
あるいは積極的に破壊してまでも、
自分の「男らしさ/強さ」を確認しないといけなくなる状況にまで、
人間を追い込んでしまう文化や環境、風土というものが怖くもある。
自分の組織を守るためなら、
個人の気持ちも、被害者も、道義も、良心も、
簡単に無視したり踏みにじったり、もみ消したりしてしまうのは、
日本のいろんな組織の不祥事でも重なる。
その組織の外部から見れば、あまりにも愚かだったり、
非人間的だったり、短絡的だったりするのだけれども。
最初の記事の教授の話から言えば、
そういうことをする本人も、
もはや人間として、まともに愛を持って扱われた経験が、
圧倒的に欠如してしまっているのかもしれない。
だからこそ、
他者の人間性を無視する、あるいは、あえて復讐する、
と言うことがおきているのかもしれない。
抑圧は連鎖する。